イキりオタクの末路
自分には誇れるものがない。
とある日曜日の夜、特にやる事もなくとある動画サイトで様々な動画を見て楽しんでいた。いくつの動画を鑑賞し、ひと段落したところで感じた虚無感。
その虚無感が
"自分には誇れるものがない"
という気持ちを生んだのだろう。
誇れるものを考えるも、驚く事に何も出てこない。26年間生きてきて私は何をしてきたのかと思いながら、眠りについた。
時期は冬。朝と夜は一段と冷える。寝起きが辛い。暖かい布団の中で好きなだけ寝ていたいという気持ちを押し殺し、起き上がりスマートフォンを手に取りLINEの通知を確認する。
するとそこには
「スノボいこう!」
という友人の誘いが来ていた。
私はすかさず「これだ!」
と思った。
なぜ?と思うかもしれない。
私のようなオタク系陰キャでスノボができる人はそうそういないと思ったからである。(実際結構いて私よりも上手い方なんてザラにいる)
即答で行く返事をした。
大学生の頃はスキー場へ行ってはスノボ初心者の陽キャの姿を見て優越感に浸るという非常に性格の悪いことをしていた。
人間、性格はすぐに変わらない。
その優越感とスノボをすることで他のオタクとは違う感を出したいという、どうしようもないイキリ感情が私の心の中で渦巻いていた。
スノボを楽しみたい気持ちも少しあったが、結局優越感に浸りたい、イキりたいという目的でゲレンデへ。
スキー場へ行くとたくさんの初心者の姿が。それを横目にスノボができる自分に酔いしれていた。
自分より上手い人が多い上級者コースへは基本的にいかず、初心者コースをあえて行く。そんな事を繰り返す。
何か自分が変わったような気がしていた。スノボという取り柄があると勝手に思っていた。
そんな有頂天な気持ちのまま上級者が多いゲレンデへ。
そこは別世界であった。
周りは自分とは比べ物にならないぐらい上手い人が多い。
中には小中学生もいた。
有頂天な気分は一瞬にして奈落の底へ。
沈んだ気分でスノボをやる元気が無くなった。リフト1日乗り放題券を買っていたが、1時間も経たずして帰路についた。
家に帰り、ぼーっと2時間。
心が痛むほどの虚無感。
何も考えられず、ただただ自分自身が嫌で仕方がなかった。
こんなしょうもない事で優越感に浸っても自分には何も残らない。
上には上がいる。それも自分の想像よりもはるかに多く。
しばらくは虚無感に苛まれていたが、次第に前向きな気持ちも生まれてきた。
誇れるものは今あるものではなく、これから新たに見つけていこうと。
優越感に浸ったり、イキったりしても自分には何も残らないという事を身に沁みて感じた出来事であった。